Yuri Iwamoto「切っても切っても生えてくる木」展

実家の前の植え込みに、ある日ケヤキが生えていた。鳥が運んできた種が発芽したのだろう。大きくなると困るから、父が切った。そうしたら今度はヤツデが生えてきた。その次はアオキ・・・
こってり疲れていた日、思いっきりガラス片を掴んでケガをした。
傷口がぱっくり割れて指紋が左右にずれた。
新しく盛り上がってきた皮膚は綺麗な色をしているけど、そこには指紋ができない。
色々なことはこんな風にちょっとずつ不可逆で、起こったことを記録したり変化を飲み込みながら進んでいく。

私が普段触っているガラスという素材は、温め続けると再び液体に戻ろうとする性質がある。
吹き過ぎて薄くなった部位は萎み、折り重なるようにヒダを作って、それらがまたくっついて厚くなろうとする。
道具で触ってついた跡は、徐々に丸みを帯びて滑らかなテクスチャになっていく。
ガラスは作り手との間に起こったことをその身に記憶しながら、重力や熱、時間を経て形を現す。
その様子は人が持つ、治ろうとする力に似ている。
切られた箇所からまた伸びてこようとする植物に似ている。

ケガをした / 大事な枝を切られた
そのあとの一手は、人が施した形を超えてくる。
そこに見る新鮮な感動を留めた。

日時:2023年10月13日(金)−17日(火)  12:00~18:00(最終日は17:00)
場所:R 東京都港区西麻布2-16-5
TEL:03-5725-5636